族と囲炉裏と浜風と


これは、「某キャンプ場」に行った時の出来事です。皆さん、キャンプに行かれる時はどういうものを理想としてキャンプをされますか? 「自然の中で楽しみたい」、「静かな雰囲気の中で心を癒したい」、「他人の目を気にせずにのんびりと過ごしたい」・・・などそんな風に思われる方も多いんじゃないでしょうか?

これは僕らがそういった理想から大きくかけ離れた状況下に追い込まれ、しかしその中でもたくましくキャンプ生活を楽しもうと悪戦苦闘したある夜の記録であります。

2台のスクーターが走ってた駐車場

それは夜のことでした。キャンプサイトの両脇に駐車場があるのですが、突然南側の駐車場に2台のスクーターが現れました。何をするのかと見ていると、駐車場を我がのサーキットの如く、けたたましい音をかき鳴らしながらぐるぐると回り始めたではありませんか!

暴走族???

僕らがキャンプしていることなどお構いなしです。サイトの真横まで接近しつつ暴走しております。「なんちゅう迷惑なやっちゃな!」・・・僕らはもちろんそう思いましたが、すぐに文句を言いに行くほどいきり立ってもいないし、どっちかというとそういう争いは好まない集まりなのです。

・・・こちらのその時の陣容はと言えば、男女・家族を含めて10人ほどの集団でした。すでにシーズンを過ぎているせいか、他のキャンパーはいなく、完全にキャンプ場を貸切の状態でした。

しかしそれがかえって良かったのかもしれません。こちらの方が人数的に勝ってもいるし、女子供もいる。とても戦闘的な集団とは向こうにも見えなかったのでしょう。
だからこちらも迷惑はしているものの、地元の若い衆が騒いでるだけなんだ・・・と、とりたてて敵対するつもりもありませんでした。それよりはこちらのメンバーで色々話したりお酒飲んだり笑いあってる方が楽しい。こちらも決して小声で話してるわけでもなく、周囲からしたら騒がしいキャンパーに見えたかもしれないし。
(貸切状態だったので好き放題してたわけです。周りに他のキャンパーがいたら騒いだりしません。)

そうこうしているうちに
ギャガガザザーーーンッッ!と、音が鳴り響きました。

「あ、コケよった。(笑)」

決して笑っちゃいかんのですが、その転倒のショックなのかオレらの真ん前でコケた事に恥じ入ったのか、その2台のスクーターは帰ってしまいました。


数台の車とバイクが・・・!


これでようやく静かになるかと思われたのですが、程なく今度は北側の駐車場が騒がしくなってきました。どうやらそちらに車4,5台、バイク2,3台の集団が集まって、音楽は鳴らすわ酒は飲むわの大狂宴が始まったようなのです。

南側の駐車場と違って北側の駐車場は僕らがテントを張っている場所と反対側の場所にあるということもあり、大してやかましいわけでもないのですが、ひとつだけ僕らがそこに大接近しなければならない理由があったのです。

・・・そう、
トイレが北側の駐車場にあるのです!!!

男はそこらで用を足すことも出来るかもしれないけど、女子供はそうはいきません。そういう場合誰かが護衛についていかなければならないでしょう。

しかし、あえて一人でトイレへと向かってみたのです。そいつらがどういう集団なのか確かめておく必要もあるし、まさか何の理由もなくいざこざに巻き込まれるなんてことはないだろう・・・その辺自分は平和ボケの日本人なのかもしれません。
けど、向こうだって同じ日本人だろう、話してわからんわけじゃあない・・・と。

そしてそいつらの真横を通ってトイレに入ろうとしたのです。10数人は集まっているようです。そこでそいつらの話してる会話の内容を聞いてみようと耳をそばだてました。










こいつら日本人じゃない。

話してる言葉が日本語じゃ無かったんですよ!しかも英語でもない。一体何語なのかわからない。フィリピン語か?スワヒリ語か?はたまたアラブ語か???

ここで平和ボケの日本人をやってる場合じゃない!と考えを一瞬で改めさせられた僕はとりあえず出すものは出して(笑)、テントサイトまで戻ってきました。

「あいつら日本人ちゃいまっせ!わけのわからん言葉で話しとる!」

そこでともかくオレら流会議・・・「どうしましょうかね?警察に電話しましょか、
『ビ○ラディンいますよ』って。」(それはちゃうやろ)

そしてしばらくしてまた尿意を催し、もう一度北側駐車場に向かってみました。すると状況が一変、その数台の車の横に
パトカーが停まり、警察官とそいつらが何かを話しているようで。しかもそこに制服を着た女子高生たちが!!!
一体何が起こっているんだ???後からその謎の外国人と遊ぶべくその女子高生がやってきたのか?巡回中のパトカーに見つけられて帰るように諭されているのか?そしてその不良(暴走?)集団を解散させるべくポリスメンが立ち上がったのか???

僕はもう訳がわからなくなり、オレら流サイトに報告・・・
「女子高生いまっせ!」

「何!それは見に行かなくては!」と立ち上がったもの数人。・・・オレら、この状況を脅威に思ってるのか楽しんでるのか一体なんなんだ・・・???(たぶん楽しんでる)

すると突然南側の駐車場から自転車に乗った人が現れました。「わて、ここの近くに住んでて周辺の見回りをしてるもんですねんけど・・・(以下省略)」

見ると片手に焼酎のカップを持った風変わりな人がそこに立っている。どう見てもまともな生業をしている人には見えない。

「へえぇ、皆で焚き火やってギター弾いてお酒飲んで、えろぅ楽しそうでおますな?」

どうやら酔っているようだ。「一緒に焚き火に当たりませんか?つまみも酒もありますからどうぞ飲んでくださいよ。」 と、僕も酔っているもんだから、なんだか気さくで楽しそうなこの人にお酒を勧めた。

「いやいや、そこまでしてもろたら申し訳ないわ。ここでよろしいよ。」 と、ちょっと焚き火から離れた場所に座る。温めた熱燗を共に飲みながら、焚き火(今回は囲炉裏仕立て)を囲んでしばらく愉快な時が続く・・・

「わて、正直に言いますけどな・・・ヤ○ザですねん。」

・・・
え!?そうなん???僕はその時どういう反応をしていいものかわからず、思わず口に出たものは、「えぇぇ?
ほなどっか組とかに入ってはるん?」
(笑)でした。(僕も酔ってる勢いで何を話してるんやら。)

僕はどういう意味の○クザなのかよく理解できませんでしたが、テキ屋などもやったりするようで、そういう意味のヤク○?ほんまのヤ○ザ???・・・僕の頭は混乱気味。しかし共に酒を飲み、焚き火をを囲んでいるならそんな細かいことはどうでもいいじゃないか!と頭の中で整理して、しばらく一緒に酒を飲んでおりました。

そこで向こうの謎の外国人について聞いてみました。
「あぁ、あれブラジル人。わての知り合いかもしれへんな。この辺ブラジル人多いんよ。」 そうなのかー、納得。

するとまた南側駐車場に一台の車が入ってきました。それに合わせてそのおっちゃんも席を立ち、その車に向かっていく。 「あ、知り合いなんかな?」 とそう思いましたが、皆そのまま何事も無かったかのようにお酒を飲み、焚き火に当たる・・・


すると突然背後で誰かと誰かが乱闘を起こしてる物音がしてきた。「おまえ俺の※※※を※※※に※※※する気やろ!」「俺は※※※なこと※※※無いっちゅうねん!」

「あ???あれ、さっきのおっちゃんちゃうのん???」
 まさに今にも殴り合いが行われようかとしている(もう殴り合ってたかも)修羅場状態

「いかんわ、こら止めに入らな。」 一体何が起こっているのかわからない状態だけど皆勝手に足が動き、その間に割って入る。
「ほら、そんな風におっちゃんいじめてもしゃーないやんか、落ち着こうで!」

ともかくその場を終結させ、その二人共々焚き火に当たらせて落ち着かせる。しかし車座になって焚き火に当たった、なおその時でも一触即発状態。
そのおっちゃんと格闘になってた人が言うには、
「明日※※※まで行かなあかんのよー、そら俺も○ンナーやっとるけどよ・・・」

え?え??えええ???シ○ナー???


確かに匂ってみるとシン○ー臭が匂う・・・シ、シ○ナーぁぁ???
シン○ー中毒???その○ンナーのことをバラすとかバラさんとかでケンカになってたちゅうこと??? もう何が何なのかわかりません。僕は理解不能に陥りそうになっています。

でも共に焚き火に当たって話をしてると次第に気分も落ち着き、わかりあえてきた。その二人もタバコをお互いに進呈したりと少しずつわだかまりが解けて来たかのように思える。

そう、そうなんだよ!こうして共に星空の降るような屋外で、焚き火(囲炉裏)を囲んで酒を飲んで話し合えば、皆
「ダチ」(友人)!(「Let'sダチ公」より)

生まれも育ちも職業も全然違う、日本全国から集まったオレらキャンプ仲間も、地元のヤ○ザもシ○ナー中毒も、焚き火を囲めば皆
仲間なんだよ!!!

そう感じた僕は頬に一筋の涙が流れるのも気付かずにただただ杯を傾け、囲炉裏の暖かさに身体を委ねているのでした・・・

明くる朝、もうすでにヤ○ザのおっちゃんもシ○ナー中毒の人もいませんでした。一人一人、酒に酔いつぶれた人からテントの中に入っていきましたので、彼らが去って行くところを見た者がいるのかいないのか。

朝の日の光の中、十数人の若者達がたむろしていた北側の駐車場に行ってみました。
するとベンチの上ににウィスキーの小瓶が一つ。僕はフイに近くに生えていたススキの穂を折り、ウィスキーの瓶に刺し込みました。

夜な夜な暴れる若者達のたぎる情熱の残り火とでもいうべきこの小瓶。それに手向ける1本のススキ・・・
・・・辺りはもう秋。これから厳しい冬がやってきます。このキャンプ場にも少し肌寒い「浜風」が吹いています。
浜風に物悲しく揺れるススキの穂・・・それはここに集った人達の蒼い青春の儚さを物語っているのではないでしょうか。

人間、どんな状況だろうと楽しむことは出来るのです。さぁ、皆さんも臨機応変にその場の状況をアレンジ・工夫してみませんか?そこに違った喜びも生み出されてくるはず・・・

何が起こるかわからないのがキャンプなのだから・・・(笑)